自由に、自己流に、やりたいことには貪欲に。TYOトップディレクターのキャリアの軌跡
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佐藤 渉
Director
最近、ディレクター1年目の僕の自己紹介文が見つかりました。 “僕は面白いCMを作って世の中をざわつかせたいです。広告に作り手の作家性なんて求められていないのかもしれませんが、僕は自分の感性を大事にすることに拘って、これは佐藤渉にしか表現できないと指名されるようなディレクターになりたいです。” 現在の僕の自己紹介、特に修正する箇所はなさそうです 。
TYOで「WHOAREYOU」のディレクター、そしてキャプテンを務める佐藤 渉。『さけるグミVSなが~いさけるグミ』『カレーメシ』など、CM制作を志す者であれば誰もが一度は彼が担当したCMを見たことがあるのではないだろうか。佐藤のCMには唯一無二の個性とユーモアがあり、演出だけではなく企画から指名で依頼を受けることも少なくない。彼のTYOでのキャリア、そしてCM制作にかける思いを聞いた。
大学時代は「やりたいこと」がなかった
佐藤が映像に出会ったのは、大学4年生の時だった。大学在学中、就職活動で商社に内定が出ていたものの、特に「やりたいこと」が見つかっていなかった彼は、ふと都内で開催されていた「世界のCMフェスティバル」を見に行った。それは、世界各国のトップクラスのCMをオールナイトで上映する人気イベント。短い尺の中で、個性を出しながらもその商品の魅力を最大限に伝える──「こんなおもしろい世界があるのか!」と感銘を受けた彼は、内定を辞退して大学卒業後に映像の専門学校に通うことにした。そしてTYOの門を叩き、2006年に就職することになったのである。
当時佐藤が興味を持っていたのは、CMの「企画」だった。演出よりも、企画を考えるほうにおもしろさを見出していた彼は、TYOの面接時にも「とにかく企画がやりたい」と伝えていた。ただ、会社の意向もあって最初はディレクターからキャリアをスタートすることになる。映像制作の一連のフローを経験することは必要だと思いつつも、考えられた企画の演出部分のみを担当することに、最初はなかなかおもしろさを見出すことが難しかったのだという。

「演出」の奥深さに気づくまで
そんな佐藤の仕事の価値観を変えたのは、とあるプロジェクトがきっかけだった。佐藤が考えたとあるCMの企画が通り、いざ制作に入ったとき、完成された映像の演出に満足がいかなかったのだ。「いくら企画がよくても、演出がよくなければいいCMは完成しない」。そのことを痛感した佐藤は、「演出」という仕事の奥深さに少しずつのめり込んでいった。
ディレクターとは多くの場合、広告会社から届いた企画の「演出」を手がける仕事がほとんどだが、佐藤はその企画力を買われ、現在は名指しで依頼が舞い込んで企画から演出までをトータルして担当することも多い。
ただ、最初からそうだったわけではない。彼は新人時代から、クライアントとのオリエン時に「すこし外れているかもしれないけど」と別の切り口のアイデアを持っていったり、日頃の業務に加えて、おもしろいと思う企画を考え資料にまとめてプロデューサーの机に置いていったりと、「自分の企画」を伝えるための行動を怠らなかった。その資料には、時に50案以上の企画がまとめられることもあったという。
そういった行動の積み重ねで、「こういう企画なら佐藤が得意なんじゃないか」と認知が広まり、少しずつチャンスが広がっていった。すべては彼の、CMにかける思いと行動力が、キャリアの礎となる種を生み出していったのだ。

苦手だった「コミュニケーション」との付き合い方
着実にキャリアを重ねている佐藤だが、入社当時はもちろん苦手なこともあった。もともとコミュニケーションが苦手だったという彼は、「できれば誰とも話さずに生きていたかった」と言い、入社当時は同僚から「佐藤は100語くらいしか話さない」と言われるほどの無口だった。けれどもディレクターは、多くの人とコミュニケーションを取らなければいけない仕事だ。演者、スタッフ、関係者の数は多岐に渡る。
そんな佐藤は、「仕事をするなかで、自分なりのコミュニケーション力をつけていった」と語る。コミュニケーション能力があると聞くと、笑顔で明るく誰とでも分け隔てなく話せる人物像を想像するかもしれないが、佐藤は短く端的に、最低限のコミュニケーションを取る。「相手と意図が伝わり合うこと」がコミュニケーションの本質だ。既存の常識にとらわれるのではなく、独自のあり方を貫きながら自分の個性と向き合っていく姿勢は、佐藤が作るクリエイティブにも表れているような気がした。
自由に、自己流に、やりたいことには貪欲に。佐藤は自分自身が自由に育ってきたからこそ、後輩にも「自ら考え、行動する力」を求めたいのだという。
「TYOは、やりたいことがあったらやらせてもらえるチャンスがある。自分で考えて突き進める人にとっては、これ以上の環境はないと思いますよ」。
──そう語る彼のもとでの仕事は、きっと刺激的に違いない。

Interview
インタビュー
自分らしく働くとはどういうことなのか、
TYOで働く先輩たちにインタビューをしてみました。