誰かを目指す仕事ではない。『THE FIRST TAKE』を手がけるプロデューサーの仕事哲学

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映像を志す者で──いや、そうじゃなくとも今を生きる若者で『THE FIRST TAKE』を知らない方はほとんどいないのではないだろうか。TYOにとって昨今の代表作となった、『THE FIRST TAKE』の映像プロデュースを担当しているのが木下健太郎だ。木下は、プロデューサーを務めながら自身で演出、編集も手がけるなど、まさに枠に捉われずに独自の道を突き進む。彼がこの道にたどりつくまでの軌跡や仕事への思いを聞いた。

「とりあえずのサラリーマンにはならない」

「木下さんは、動き方が独特すぎる」。多くのTYOの社員がこう語るほど、木下は社内でも謎のヴェールに包まれている異色のプロデューサーだ。代表的な仕事でいえばやはり『THE FIRST TAKE』だが、それ以外にも、CMやWebコンテンツなど、さまざまな映像を手がけている。代表作には、『ひみつのPRIME』シリーズや『お~いお茶「お〜い、オオタニサン!篇』などがある。

木下が映像の道を志したのは大学生の時。もともと趣味で写真や映像を撮っていた彼は、漠然とその道に進みたいと思うようになっていた。けれど当時は具体的なビジョンや夢があったわけではなく、「”とりあえず”のサラリーマンにはならない」とだけ決めて就職活動をせず日々を過ごしていた中で、ふと、とあるCM撮影の裏側を特集するテレビ番組を見かけたのだという。

「普段何気なく観ているCMを、実際にこうやって作っている人たちがいるんだ」。大学時代の木下はそれがとても新鮮に思えて、感動をそのままに、CM制作をメインとする大手映像制作会社の門戸を叩いた。

「できること」を積み重ねた先に得たチャンス

ディレクターになる気概で映像制作会社に入社した木下だったが、今と違って当時は、ディレクター職は映像系の学部を卒業していないと就けないことに後から気づく。まずはプロデュダクションマネージャーへの道を進むことになった彼は、その間も映像の勉強を欠かさずしたり、自分が担当した案件のメイキング映像を自ら作ってみたりと、自分ができること、やりたいことを業務の合間に積み重ねていった。

そんな彼に転機が訪れたのは2005年、とある旅行会社のCMプロジェクトだった。タレントに家庭用のビデオカメラを持たせて海外の旅の様子を撮影してもらう──。今でこそ「Vlog」はYouTubeなどで当たり前のように見かけるが、当時はまだそんな言葉すらもない時代。リアルな旅の感じを出したいけれど、タレントだけに撮影を任せるわけにはいかない。とはいえ通常の撮影だと、カメラマン、ディレクター、制作進行の3人が最低でも密着しなければならなくなり、それだとタレントの生の表情を撮ることは難しい。

「撮影も、僕がやります」。木下はその現場で唯一、制作進行も理解していて撮影の知識もある人物だった。彼に任せることは企画にとって最適だと判断され、そうして木下が撮影ディレクションまでを担当したこの広告は、結果として日本最大級の広告賞である「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」で金賞を受賞した。

撮影や編集など、自分ができる・やりたいと思っても実績がないとなかなかチャンスが訪れない世界で、チャンスを掴み取ったことは大きかった。このCMが実績となり、少しずつ、「ディレクターも撮影も編集もできるプロデューサー」としてのキャリアが築かれていったのだという。

プロデューサーは、誰かを目指す仕事ではない

着実にキャリアを積み重ね、今ではTHE FIRST TAKEの立ち上げなど唯一無二の道を歩む木下だが、不思議とネット上ではその名前をあまり見かけることはない。

それは木下のポリシーでもある。「自分から大それた発信はしない」。SNSの個人アカウントも、スマホも持たずいまだにガラケーを使っている。新人時代から木下には「縁の下の力持ちに徹する」という信念があり、その姿勢を貫いているのだ。スタッフリストを見れば、誰が作っているのかはわかる。そうすれば、気づく人は気づいてくれて、仕事が仕事を呼んでくれる。そういったブレない姿勢には、自身の仕事と、自らの個性に対する確固たる自信が見てとれた。

プロデューサーの魅力は、「自らの個性を活かせること」だと木下は語る。そして個性とは、強烈なキャラクターのある個性もあれば、とことんまでクライアントの作り上げたい世界についていくという個性もあり、どれがいい・悪いでは決してない。

「プロデューサーは、誰かを目指す仕事ではない」。最後に木下が言った言葉が胸に刺さる。案件を積み重ねながら自分自身と向き合い、確かに歩んだ先に見える光こそが個性なのかもしれない。TYOでの日々の先には、きっと自分自身だけの個性とキャリアが見つかるはずだ。

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